題目: 「セミネール1巻「フロイトの『技法論』」の試訳」
著者: ジャック・ラカン
訳者: 保科正章
出典: Jacques Lacan, Le Séminaire Livre I 1953-1954 : Les écrits techniques de Freud, Ēditions du Seuil, 1975.
一言: ここに訳出されるセミネール1巻は、われわれのこのセミネールについての勉強会で使用する資料として作成されたものであり、翻訳として完成を期したものではありません。われわれは集まり、この資料をもとに討論し、そのさい原文(Seuil版、Association Freudienne Internationale版)を参照しています。この用途のためにテキストは意図的に、そしてもちろんわれわれの力不足のために未完成にとどまっています。concept, notion, idée、あるいはsens, signification, valeurは区別できるように原語をそのまま残してあります。概念conceptとはなんであるかが、このセミネールの重要な主題であり、sensの導入が最重要な要件であること、これは「序曲」と題された講義の最初から言われています。またle réelとla réalitéもはっきり区別できるようにしてあります。
けれどもわれわれは訳語を統一することを重要課題にすることには違和感をおぼえる。これらの語のシニフィアンとしての価値valeur、別のシニフィアンとの関係でしか決まらない価値をそぐかもしれないものである。
第四講「自我と他者le moi et l’autre」でラカンはフロイトの仏語訳についてこう述べている。「技法論集のまんなかに『転移の力動性』というテクス卜があります。この論文集のすべてのテキストがそうであるように、この翻訳にすっかり満足できると言うことはできません。特異な不正確さがいくつかあり、誤訳とすれすれです。びっくりするような箇所もあります。これらすべて同じ方向に向かうものです。文意を曖昧にするのです。ドイツ語ができる人には、原文にあたることを勧めて勧めすぎることはありません」。大事なのはあらゆるレヴェルで文意を明快にすることである。そして私はフランス語ができる人が原文にあたってくれることを信頼している。
2007年6月16日 保科正章
第二回目のセミネールでは抵抗についてマノーニとアンジューの発表がおこなわれた。Seuil版では省略された二人の発表の部分とラカンのコメントをAssociation版をもちいて再建しました。二人の発表において無意識の概念についての言及がないことへのラカンの苛立ちが興味深い。私は今、無意識の概念conceptと書きましたが、この用法には「四つの基本概念」でラカンのお墨付きがあります。概念という言葉を大事にするため、テキストではnotionというフランス語がちょこまかとうるさく登場することは申し訳なく思っています。
7月1日 保科正章
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・ 「セミネールの序曲 ouverture du séminaire 」
・ 「I フロイ卜の『技法論集』の注釈への導入」
・ 「II 抵抗の問題についての最初の発表」
・ 「III 抵抗と防衛」
・ 「V フロイ卜のVerneinungに関するジャン・イポリッ卜の報告ヘの序と解答」
・ 「VI ディスクールの分析と自我の分析」
・ 「IX ナルシズムについて」
・ 「X ふたつのナルシズム」
・ 「XI 自我理想と理想自我」
・ 「XII 時間的‐発達史」
・ 「XIII 欲望のシーソー」
・ 「XIV リビドーの波動」
・ 「XV 抑圧の核」
・ 「XVI バリン卜についての最初の論議」
・ 「XVII 対象関係と間主体関係」
・ 「XVIII 象徴的秩序」
・ 「XIX パロールの創造的機能」
・ 「XX De Locutionis Significatione」
・ 「XXI 真理は取り違えから現れる」
・ 「XXII 分析の概念」
※ラカン本人の試訳に関しましては,Seuil版校訂者,ジャック=アラン・ミレール(Jacques- Alain Miller)氏の基本原則(商用目的でなければ,ラカンのテクストの海賊版は許可される)に従い,研究資料として一般公開致します.
また,ここに掲載されている翻訳はあくまで試訳であり,訂正すべき部分がありましたら是非サークル宛のメール,もしくはBBSで御指摘ください。
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